オンブズマン事務所のウェブサイトには、この機関の役割をこう説明しています。「共和国住民オンブズマン事務所は立法府の一部である。この事務所の目的は、公共機関の活動が、法制度と倫理にのっとり、住民の権利と利益がつねに擁護されるよう実施されることを保証することである。」
コスタリカには、1980年代から司法長官事務所や、法務省などの行政機関のなかにいくつか人権擁護の役割を果たす部署がおかれていました。この任務を行政から完全に独立させるために、1992年にオンブズマン事務所が設立されたのです。
オンブズマン自身は、議会が投票で選びます。任期は4年です。現在のオンブズマンのカタリーナ・クレスポ・サンチョ(Catalina Crespo Sancho)氏は女性で、オンブズマン就任以前は、世界銀行で女性と青年についてのアドバイザーをしていました。
オンブズマン事務所に特定の公共機関について苦情がはいった際、多くの場合、まず非正式なやり方で解決を試みます。
たとえば先住民のひとが、人里離れた村から町の病院に行くと、まず予約をしたうえでもどって来なさい、といわれまてしまう。この人にとって、村に帰って、別の日にまた出て来るというのは大変なことです。そこで、何とかしてくれ、とオンブズマンに連絡します。まずマオンブズマン事務所から病院の担当者に電話して、診てくれるよう説得します。でもそれでも解決しない場合は、正式な報告書を書き、そのなかに問題の解決に向けての提言をするのです。
この報告書は厳密には法的な拘束力を持ちません。しかしオンブズマン事務所には倫理的な権限があります。また、報告書は法的な基盤のうえに作成されているわけですから、対象となる機関はたいていの場合は提言に従います。
日本には独立したオンブズマン事務所はありません。国際オンブズマン協会によると、行政苦情救済推進会議と総務省が日本におけるオンブズマンの役割を担っているとされています。
国連人権高等弁務官事務所のこの報告書の167ページに、世界中のオンブズマン事務所(この報告書は国家人権機関、National Human Rights Institutionsという名称をつかっています)のリストがあります。A, B, Cという分類は、パリ原則と呼ばれる、国際的な基準にかなっているかどうかを示します。Aが完全に基準を満たしている場合、Bが部分的、C が満たしていない場合です。