コスタリカの先住民

コスタリカ、ボルカ民族のディアブリーダート(小さな悪魔)の踊り
ボルカ民族のディアブリート(小悪魔)の踊り

今日、先住民カべカル民族の高校生が、グアテマラで開かれる中央アメリカ科学エキスポに、コスタリカの代表として参加する、という報道を見ました。嬉しいニュースです。でもその反面、こういうことがニュースになること自体が、コスタリカの先住民たちがまだまだ恵まれない境遇にあることを物語っています。

このインフォグラフィックは、2011年のコスタリカの国勢調査にもとづいて、国連がつくったものです。

たとえばこのようなデータが出ています:

  • 先住民の総人口は104,000人
  • コスタリカには8つの先住民族が住んでいる
  • 先住民が集団的所有権を持つ独自の領土が24ある
  • 先住民の総人口のうち48,500人がこれらの領土に住んでいる
  • でもこれらの領土のほぼ38%が、先住民でない人びとの手にわたっている
  • さまざまな社会的指標において、先住民は国の平均値よりおくれている
  • たとえば、非識字率は、国の平均値が2%なのに比べて、先住民は10%
  • 高校の卒業率は国の平均値が37%なのに比べて、先住民は13% (平均値もかなり低いですが)

こういった格差は、コスタリカの平等主義的なビジョンから先住民たちはまだまだ疎外されていることを物語っています。

特に白人やメスティソによる先住民領土の侵略が深刻な問題です。コスタリカは、1977年に「先住民法」を発布しました。この法律は、各先住民コミュニティーの集団所有地を定め、これらの領土内でのある程度の自治権をみとめます。でも現実にはこの法律がまもられていないわけです。

私がコスタリカの国連事務所で働いていたとき(2012-2015)政府と先住民リーダーたちとの間の対話を支援する機会がありました。この対話のなかで、先住民領土の境界線を明確にする方法について双方が合意に達したのです。その後、境界線をさだめる作業は多少すすんだものの、完了するにはまだほど遠いようです。そして、土地の所有権をめぐる紛争はいまだに続いています。

悲しいことに、当時の対話の参加者だった先住民リーダーが、数か月前に殺される事件がおこりました。まだ動機も犯人も明らかになっていません。しかし、彼の先住民領土では土地をめぐる争いが暴力沙汰になったことが何度かあり、この問題が殺人に関連している可能性はあります。

コスタリカ、レイ・クレ領土のボルカ民族の女の子
レイ・クレ領土のボルカ民族の女の子

このように、コスタリカの先住民たちが自分たちの権利を完全に行使できるようになるには、まだいろいろな障害がはだかっています。それでも、先住民たち自身、そして政府や議会の努力によって、少しずつ前進しています。

たとえば、「協議の権利」についてです。国連先住民の権利宣言にはこうあります:「国家は、先住民族に影響を及ぼし得る立法的または行政的措置を採択し実施する前に、彼/女らの自由で事前の情報に基づく合意を得るため、その代表機関を通じて、当該の先住民族と誠実に協議し協力する。」

コスタリカでは、この「協議」をどう行うべきかということについて、すべての先住民コミュニティーをつのって話し合いがおこなわれました。そして、去年とうとう先住民側と政府との間に合意が設立し、「協議のためのメカニズム」が大統領令として発布されました。これは大きな前進です。

また、去年の11月に、国立電力公庫ICEが、長いあいだ地域の先住民たちが反対していた大型水力発電プロジェクト、ディキス(Diquís)を取りやめる、と発表しました。政府側の説明は、もう需要がないから、ということでしたが、先住民たちの運動もかなり影響したはずです。これが国にとって正しい決断であったかどうかは、ひとによって意見がちがうと思いますが、先住民たちの政治力のあかしとしては重要な進展といえるでしょう。

近いうちに、先住民リーダーともインタビューを行い、彼ら自身の声を発信したいと思っています。

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