おしゃべり好きなチーズ屋さん、カロリーナ


コスタリカ、エスカスでチーズ屋さんを営なむカロリーナ

スタリカが大好きです。とくにエスカスが好き。エスカスの全部が好きなんです。」

カロリーナのチーズ屋さん、Quesos y Más (ケソス・イ・マス=チーズ+アルファ)について知ったのは、エスカスの「魔法使いツアーズ」という旅行社とハイキングに行ったときでした。ガイドのひとりが、会社のビジネス理念として、なるべくエスカスの農家や中小企業を応援しているということをツアーの参加者に説明しました。そのときに、おやつに配ったサンドイッチに使ったおいしいチーズはエスカスのQuesos y Másのものだと教えてくれたのです。

Quesos y Másは、エスカスの中心部からすこし坂をあがったところにある、ごく小さな、ちょっとむかしの日本の駄菓子屋さんのおもむきがあるお店です。はいって真正面のガラスケースの中には、6,7種類のチーズがおいてあります。左側にはビニール袋に入った何種類ものナッツやスパイスをならべた棚、反対側にはアイスクリームのはいった冷凍庫があります。 


オフィスビルから自分の店へ

Carolina Valverde (カロリーナ・ヴァルヴェルデ)といいます。42歳です。18年間、企業の職員用の食堂をやっていたんですが、娘といっしょにいる時間がもっと欲しくて、3年前にこのお店をはじめました。その前は、オフィスビルでカフェテリアのマネージャーをしていました。  

エスカスで生まれてここで育ちました。父も母も飲食業の仕事をしていて、父はエスカスにあるコスタリカ・カントリークラブで48年間はたらきました。ゴルフコースのボールひろいから始めて、徐々にイベントの組織やクラブ内のレストランの経営に進んだんです。母は一時エスカスで二件バーをひらいていました。父と母は結婚していなくて、いちどもいっしょに住んだことはありませんでした。私が彼ら二人の間のたったひとりの子供ですが、父も母もほかの人との間に子供がいたんです。私は母のもう二人の娘といっしょに母と暮らしていました。私がいちばん上です。

母は私が26歳のときに亡くなって、それからは、私が妹たちを育てたようなものです。でも父はいつも私のそばにいてくれました。今65歳で、最近カントリークラブを退職しました。エスカスでは大勢の人が父のことを知っていて、人がいいのでみんなに好かれています。

エスカスですごした子供時代はとてもしあわせでした。当時はまだ田舎で、道路は舗装していないか石畳でした。いま市営のテニスコートがある、ロサリンダ公園のわきを流れている小川で、よく水あそびをしたりオタマジャクシをつかまえたりしたものです。そこら中をはだしで走りまわって、夜の8時や9時まであそんでいて、いつもだれかのお母さんがおやつを食べさせてくれたのをおぼえています。今はあまり小さな子供があそんでいるのを見かけないでしょう。

でも数年間パナマに住んだことがあるんです。母があちらのホテルで仕事をしていたので。それでアメリカがパナマを1989年に軍事侵攻したときにパナマシティーにいたんです。一時は学校も閉鎖されて、食べものもなくて大変な状況でした。知り合いでバナナ農場を持っているおじさんがバナナをたくさんくれて、しばらくずっとそれだけ食べていたのをおぼえています。ようやく母側の祖父がパナマまで来てつれだしてくれたんですけど恐ろしい経験でした。

この店をひらくのは、オフィスビルのカフェテリアをやっているころから計画しはじめたんです。この場所に来て、道ばたに立ってどれだけ人が通るか観察したりして、二年間、いろいろ考えたすえはじめました。実はここで以前、宅配用のお惣菜屋をやっていたことがあったんですけど、そのためにここを借りた時に夫に会ったんです。この家は夫の両親のものだったので。この店でチーズとナッツをあつかうことにしたのは、調理しなくていいからです。調理仕事は危険なんで。カフェテリアをやめたのは、ひとつにはプロパンガスが爆発したことがあったからです。そのとき娘があそびに来ていてあやうく大けがをするところでした。

コスタリカ、エスカスのチーズ屋さん、Quesos y Mas
やわらかくてクリーミーなトゥリアルバ、かための燻製チーズなど、コスタリカの特産チーズがいろいろ

最初に店をひらいたときは、値段が高いだろうと思い込んで、人がなかなかはいらないもので、私が通りに出て行って客寄せをしたんです。「高くないですよ!」と呼びかけて。今は繁盛しています。チーズはサンホセの北のサルセロとサン・ラモン、それから西のほうの、火山のあるトゥリアルバで作っているものを買うんです。主人は市役所で会計士の仕事をしているのですが、週末には彼がチーズの買い出しに行ってくれてます。


お客さんとのおしゃべりがいちばん好き

今しあわせですよ。とても充実しています。将来に向けては商品をふやしたいと思っています。お客さんはひとつ所にいろんなものがそろっているのを喜びますから。ハムとかソーセージはどうかな、と考えていますけど、なるべくエスカスで作っている食料品をこれからはあつかいたいと思っています。おたがい助け合うべきですもの。

この仕事をしていていちばん好きなのはお客さんとおしゃべりすることです。ここにはお金持ちの人も来ますし貧しい人も来ます。いろんな人が来ていろんな話をしていきます。一時間おしゃべりすることもありますよ。年配の人が多くて60代、70代の人とお友達になるんで、悲しいのは少しずつ亡くなっていってしまうことです。

娘は今11歳です。ハッピーで、いつもニコニコしていて、チャーミングな子ですよ。人と接するのが好きなんです。気候学者になりたいと言ってます。この商売には興味がないみたい。私は彼女によく、 安らぎが欲しい時は山を見なさいっていうんです。私自身、神さまは信じますけど教会には行きません。人に説明してもわかってくれないので自分の中にしまってあるんです。神はすべてのものの中にいると思います。世の中のみにくいものは人間が作り出すものです。

コスタリカが大好きです。とくにエスカスが好き。エスカスの全部が好きなんです。伝統や自然、食べ物、しゃべり方。エスカスは小さな町ですから人がとてもいいんです。

この国の平和主義は今でも大切だと思いますけど気をつけないと、中米のほかの国みたいに犯罪と暴力がふえていってしまうと思います。今コスタリカは危機状態です。多くの人が借金をたくさんかかえていて。大変でも財政改革はやるべきだと思いますよ。反対して先生たちがストライキをいまだに続けていますけどあの人たちは自分たちの利益のことしか考えてなくて、教師としての使命感が欠けているんです。

日本はテレビでしか見たことがありませんけど、見るもの全部魅力的です。とても知性の高い国民で、女性がとてもきれいですね。それに豊かな伝統のある国です。日本のひとへのメッセージですか?エスカスに来てください、ここの山と自然と何よりもエスカスの人びとを知ってください。かざらない、心のやさしい人たちですよ。

(インタビュー2018年10月23日)

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください